> 怪獣キター!!!
> やばすぎるって!!!こんなの映画じゃん!!!
> 友達になれるんじゃね?
> だったらブロンド美女を連れてこないとなw
> ハリウッド映画化决定!!!
> 先に日本で映画化でしょ! 怪獣映画といえば日本!
ネットはお祭り騒ぎだった。現地に居ない人間が、観客気分で囃し立てていた。
その空気が変わったのは、巨大生物が市街地を破壊し始めたからだった。
> 待って待ってやばい ビルがずっと揺れてる
> 逃げて!!!本当に早く!!!
> え ビルが倒れた 本当に倒れた
> ヤバイって 災害じゃん
> 荒神だったか
> 守り神が人間に怒って荒ぶってる説
> 天皇陛下に鎮めてもらうしかないんじゃないか?
> 妖怪という線も捨てきれない
> この大きさの妖怪は、それはもう神様でしょ
> デイダラボッチとか?
> それは妖怪より神様寄りじゃね?
> じゃあ牛頭馬頭
> 牛頭馬頭は妖怪じゃねぇ!
> 大入道ならワンチャン
> 意外と大きな妖怪っているんだな
> 俺はもう 狸か狐に化かされたと思いたいよ……
> 友好的かもとか言ってた人 今どう思ってんの
> 電話が繋がらない 電話回線がパンクしてる
> 怪獣に悪気はないかもしれないだろ よろけちゃっただけかも
> 悪意があろうがなかろうが、人を殺しちゃったらそれは害獣なんだよなぁ
ネットの声は恐れに変わっていく。
それでも、対岸の火事という感覚は拭えず、どこか他人事のようだった。
◇
巨大生物が居る市街地では、陸上自衛隊の隊員たちが避難誘導をしていた。
任務は救助と避難誘導であり、装備は救助器材と無線機のみ。武器はなかった。
市民を誘導しながら、立ち上がる白煙が視界の端に映る。
「落ち着いてください。こちらへ!」
後方から叫びに近い声が飛ぶ。
「来るぞ!」
振り向いた瞬間、視界に灰色の巨体が映り込んだ。
地震のように大きな揺れによろめき、市民の大半が転んでしまう。
近くのビルの外壁から、コンクリートが剥がれ落ちた。
巨大生物が身をかがめ、転んでいる市民に顔を近づけてじぃっと見つめている。
「う、うごくな」
隊員の誰かが呟くように言った。
言われるまでもなく、誰も動くことはできなかった。
恐怖で体が動かず、巨大生物を刺激しないように全員が息を殺した。
巨大生物は頻りにフンフンと臭いを嗅ぐ。
隊員が横目で巨大生物の様子を伺うと、どうやら市民が失禁しており、その臭いを嗅いでいるようだった。
暫く臭いを嗅いでいた巨大生物は、やおら体を起こした。
皆が安堵したのも束の間、巨大生物は両手を合わせ、まるで水を掬うようにしてその場にいる人間を掬い上げた。
「うわああああ!」
悲鳴が上がる。市民も隊員も皆がパニックになっていた。
巨大生物は自分の手を口にあてがい、多くの人間を飲み込んだ。
◇
SNSではテレビ中継、ライブ配信のリンクが飛び交っていた。
自衛隊員が市民を誘導している映像が流れる。
> 自衛隊なんで攻撃しないの?
> 武器持ってない? なんで?
> 攻撃しろよ!!
> 自衛隊が攻撃出来るだけの根拠がないんだろ
> 自衛隊は怪獣との戦闘を想定してねぇ!
> 日本終了?
> おいおいおいおいおい
> 待て待て待て!!食ってる!!人間を食ってる!!
> やばいって!!
> だめだ 完全に捕食者じゃん
> むり 見てられない
◇
危機管理センターに怒号が飛ぶ。
「国民が食われているんだぞ! 上の者が責任を取れば済む話だ!」
「そうだ! 法の解釈なんて後からどうとでもなる!」
怒号の中、総理が静かに立ち上がる。
「超法規的措置だ。責任は私が取る。……自衛隊に、武器使用を許可する」
総理の指示を現場に伝えようと担当官が動く。
入れ替わるように、別の担当官が現場からの報告を上げた。
「現地から報告! 巨大生物とは別の巨大移動物体を確認!」
担当官がスクリーンの映像を切り替えると、そこには白くて巨大な何かが走っていた。
「……ロボット?」
総理が間の抜けた顔でそう呟く。
部屋の中は、しんと静まり返った。
