お父さんとお母さんに挟まれて、私は静かに規則正しい呼吸をし、寝息を立てるふりをした。
本当はまだ起きていたけれど、二人の邪魔をしてはいけないと思ったからだ。
二人は私を挟んで会話している。二人は声を抑えているが、私には話の内容が明瞭に聞こえている。
「クセニア……すまない。俺は、親父の遺した店を守らなきゃって、そればっかりで、俺……」
お父さんの声は、ひどく掠れていた。
「家族を蔑ろにしちゃってた……。親父の遺志を継いでるつもりで、見当違いなことをしちゃってた……」
「……私もよ、デオン」
お母さんの声は、いつものおっとりした響きの中に、微かな震えを帯びていた。
「あなたがお店を守るために、どれだけ必死か分かっていたから。休んで欲しいなんて、おいそれとは言えなかったの……」
お母さんは、ずっと抱え込んでいた胸の内を明かす。
「私、ソフィは元気にお手伝いしてくれるし、大人しくていい子だからって、ついつい甘えてた。でも、我慢させちゃってた」
鼻をすする音が聞こえた。お母さんが泣いているのだ。
「私、自分が我慢すればいいと思ってた。でも、ソフィにも我慢させちゃってた。いくら大人びてるといっても、あの子はまだ六歳の子供なのにっ」
私は思わず叫びそうになった。お母さんのせいじゃないよって。目を開けてお母さんを抱きしめそうになった。
私より先に、お父さんが私越しにお母さんを強く抱き寄せるのが分かった。
「明日から。明日から改めよう。直ぐには上手くいかないかもしれないけど……。それでも……。ソフィも、俺たちも、笑顔で過ごすために」
「ええ。明日は。明日からは。きっと、もっといい日になるわ」
まだ、問題を認識して変わろうとし始めただけ。それでも、二人の声には確かな希望の光が宿っていた。
私は心の中でこっそりと微笑み、今度こそ本当に、深く安心できる眠りへと落ちていった。