患者数が多く、不妊原因にもなっているのが、子宮内膜症です。
女性ホルモンの働きに異常が起こるもので、特に子宮内膜症は月経痛に悩む女性の90%以上に見られるほど、ポピュラーな存在です。
晩婚化や少子化とも関係があると言われており、ここ10年ほどで患者数が増えています。
こうした、女性にとって身近な子宮内膜症の治療方法と使用する薬剤について解説いたします。
子宮内膜症とは
本来子宮内にあるはずの子宮内膜が子宮外に形成されたり、子宮内膜が厚くなりすぎる状態の総称です。
特徴は月経痛があることで、痛みがひどいケースでは起き上がるのも困難なほどになります。
また、月経時の出血量が多く、出血がだらだらと長く続くこともあります。
内膜が形成される子宮外の部位としては、卵巣、卵管内、子宮筋層内、骨盤腹膜、腸管などがあります。
まれに、鼻腔内や肺にまで内膜が形成されることがあります。
特に子宮筋層内に内膜が形成される場合には、子宮腺筋症と呼ばれ、非常に強い痛みと多量の出血を伴います。
月経痛は「病気ではないから」として我慢しすぎる傾向にあり、普段から痛み止めのみを服用し、治療を行わず放置している人も多くいます。
最近では卵巣内膜症嚢胞(チョコレート嚢胞)のがん化(悪性)や卵巣の破裂が増え、症状を放置した結果重症化してしまい、緊急搬送されるケースもあるなど大きな問題となっています。
子宮内膜症の治療方法
(1)薬剤による治療
症状が軽度な場合、薬剤による治療のみで症状が改善されることがあります。
低用量ピルまたは中容量ピルと呼ばれる、妊娠した時と似た状態にする薬を使用して、月経が起こらないようにします。
これは、ホルモンバランスを妊娠中のものに変化させることで、子宮内膜を形成する働きを止める効果があるためです。
軽度の子宮内膜症の場合ほとんどが、半年から1年ほどの継続した治療で症状が改善されます。
ピルの副作用が酷い場合には漢方薬を使用することがあります。
手術による治療と並行して剤による治療が行われることもあります。
(2)手術による治療
内膜が形成される部位や症状が重度の場合、手術を行うことがあります。
多くが、卵巣内に内膜が形成され、血液が卵巣にたまってしまうチョコレート嚢胞において、卵巣内の血液を取り除く手術や、重度の場合(卵巣が破裂または破裂の危険性があり緊急の場合)には内膜症になっている卵巣を摘出することがあります。
手術は3日から1週間ほどの入院で済むことが多く、術後の回復が早い腹腔鏡手術で行われます。
子宮内膜症治療薬の主な作用と副作用
(1)低用量(中用量)ピル
■ノルエチステロン(オーソ)
■レボノルゲストレル(トリキュラー)
■ノルエチステロン(ルナベル)など
・作用
低用量(中容量)ピルと呼ばれ、経口避妊薬として広く用いられていますが、子宮内膜症の症状改善にも効果的です。
とくにノルエチステロン(オーソ)はその効果の高さが認められており、子宮内膜症の病巣の改善と、月経にともなう痛みの改善にもその効果を発揮します。
決められた日数の間、毎日忘れずに服用しなければいけず、飲み忘れると効果が無くなってしまいます。
・副作用
妊娠したとときと同じホルモン状態になるため、妊娠初期のような症状(倦怠感や吐き気、頭痛、熱っぽさ、眠気など)が起こることがあります。
飲み初めに不正出血が起こることや、顔や体のむくみ、不規則な月経(揮発月経)になることがあります。
副作用の少ない薬剤ですが、長期の服用や同時に喫煙の習慣があることで、まれに血栓になることがあります。
(2)漢方薬
■桂枝茯苓丸
■桃核承気湯
■通導散など
・作用
漢方では、子宮内膜症などの異常月経のことを“お血”と呼び、血液が滞留して貧血を起こしている状態を指します。
これらの漢方薬は、血液循環を良くするとともに体の冷えを改善し、子宮内膜の炎症を鎮める効果があります。
・副作用
ほぼ副作用はありませんが、体質に合わない場合には胸のむかつき感や食欲不振などが起こる場合があります。
まとめ
子宮内膜症を放置しておくと、重症化してしまうだけでなく、着床障害や子宮外妊娠のリスクも高めてしまいます。
子宮内膜症があるということはホルモンバランスが正常でないという証拠ですから、自分の体に合った薬を使用し、早めに治療を始めましょう。