男性の場合、テストステロンは精巣から分泌され、体のあらゆる機能に大きな影響を与えています。
例えば筋肉量を増加させたり、二次性徴を起こすのもこのテストステロンの働きによるものです。
スポーツ選手などが使用することでしばしば問題になるドーピング剤にもこのテストステロンが含まれており、筋肉や骨を増強する作用があります。
たんぱく質を合成する働きがあり、筋肉や骨の他にも、髪や皮膚を強くするのにも役立っています。
思春期を迎える頃に分泌量が増加し、声変りが起こったり、急激に身長が伸びるのもこのテストステロンが働いているためです。
男性にとって重要なホルモンであるテストステロンの働きと、テストステロンの分泌量に異常がある場合などについて解説します。
テストステロンの働き
テストステロンは男性らしい体つきをつくるだけでなく、精力を増大させたり、気持ちを意欲的にする作用もあります。
テストステロンは、性腺刺激ホルモン(LH)と黄体形成ホルモン(LHRH)がバランスを取り合うことで分泌が正常に行われています。
男性の性機能に大きくかかわっており、二次性徴期からは生殖器を発達させたり、性欲や性衝動を起こす働きがあります。
テストステロンが過剰に分泌されると様々な悪影響があり、赤血球が増えすぎる多血症や、体のむくみや血中コレステロール値の上昇、吹き出物ができる、血圧の上昇、肝機能の低下(肝硬変や脂肪肝など)、しわが増える、情緒不安定になるなど様々な問題が起こります。
テストステロンの基準値
男性の場合のテストステロンの正常値は、2.00~7.60の間です。テストステロンは男女ともに日内変動が激しいホルモンのため、この基準値の範囲を多少下回る、または基準値を超える場合も問題はありません。
テストステロンの検査方法
血液検査を行い、テストステロンの量を測定します。女性の場合と同様に、昼間は分泌量が大きく低下し、その間細かく分泌量が変動するため、検査はできるだけ朝早い時間帯に行うようにします。
テストステロンの数値が高い場合
テストステロンの分泌量が基準値を大幅に上回っている場合、以下のような疾患の可能性が考えられます。
- 男性ホルモン産生腫瘍
- 先天性副腎過形成
- 精巣女性化症候群
- 薬剤の副作用
男性ホルモン産生腫瘍とは、精巣内にできた腫瘍からテストステロンを放出することで体内のテストステロン量が過剰になる症状です。
この場合は、原因となっている腫瘍を手術で取り除くか、テストステロンを抑える薬を服用するなどして治療を行います。
先天性副腎過形成とは、精巣とともにテストステロンを分泌している副腎が大きく腫れる(過形成)ことによって、テストステロン分泌が過剰になる症状です。
治療方法は、原因となる糖質コルチコイドおよび鉱質コルチコイドの不足を補うための薬を継続的に服用します。
精巣女性化症候群(アンドロゲン不応症)とは、外見は男性の姿をしているにも関わらず、女性の染色体をもっている状態のことを言います。
二次性徴を迎えても体が完全に男性化せず、華奢で女性的な体つきのまま成長が止まってしまう病気で、テストステロン剤を継続的に投与することによって症状を改善することが可能です。
薬剤の副作用とは、主に抗うつ薬や向精神薬などが原因となり、テストステロン分泌が増えてしまうもので、原因となっている薬剤の服用を中断するか、代替となる薬剤に変更することで症状が改善されます。
テストステロンの数値が低い場合
女性でテストステロンの数値が基準を下回る場合はまったく問題がありませんが、男性の場合は、性欲低下や精子の数が減少する、射精しにくくなるなどの性機能障害が現れることがあります。
男性不妊の原因のほとんどが、こうしたテストステロンの分泌が少ないことによるものです。
薬剤によって、足りないテストステロンを補うことによって症状は改善されます。