子宮筋腫は、子宮内膜症よりも自覚症状がないことが多く、気付かないうちに不妊の原因になっていることがあります。
子宮内膜症と同じく、女性ホルモンの働きすぎが原因となっていることが多く、30~40代の女性を中心に、最近では20代の若い世代の発症率が高まっています。
不妊症の原因の一つとなっている子宮筋腫について、治療方法や薬剤について解説いたします。
子宮筋腫とは
子宮内膜症と混同されがちですが、子宮筋腫は子宮内にコブのような腫瘍ができる状態のことで、病巣の形状以外にも様々な違いがあります。
まず、子宮内膜症は月経痛や経血量の多さなどの自覚症状があることが多いですが、子宮筋腫のある人のほとんどは自覚症状がないことが多いです。
不妊症の治療のために病院を受診した際に、超音波検査で筋腫が見つかり、驚かれたという人もいるかもしれませんが、子宮筋腫は成人女性の4~5人に1人あると言われているほど、身近なものです。
子宮筋腫があると、筋腫の部分に血液が集中し、筋腫以外の子宮内膜が薄くなりすぎる/厚くなりすぎる、でこぼこと変形してしまう、炎症を起こすなどの異常が起こります。
子宮内膜が正常に整っていないため着床障害になりやすく、筋腫が卵管などを圧迫すると卵管閉塞やピックアップ障害が起こることもあります。
まれに、筋腫ができる部位がほかの臓器を圧迫したり、筋腫が多くなると下腹部痛や排便痛、不正出血があるほか、貧血や動悸が起こることもあります。
子宮は筋肉組織で構成されており、筋腫は筋肉組織が周りの筋肉に押されることで渦巻き状の細胞の塊として出現します。
子宮筋腫の治療方法
(1)薬剤による治療
子宮内膜症と同様、軽度の場合にはほとんどが薬剤による治療のみ行われます。
低用量ピルで妊娠したときと同じホルモン状態にしたり、卵巣の働きを活発化させる脳下垂体ホルモンを抑える薬剤(男性ホルモン剤)を使用するのが一般的です。
環境や仕事場などでのストレスが原因の場合には、体質や体調を改善する漢方薬が用いられることがあります。
(2)手術による治療
ほとんどが良性の腫瘍のため、下腹部痛や出血過多などの症状がない場合には手術を行いません。
痛みが激しいなどの場合には腫瘍の部分のみを摘出します。
しかし、子宮内膜を傷つけずに腫瘍だけを取り除くのが困難なため、妊娠を希望している場合に手術をすることによって不妊のリスクを高めてしまう可能性がある場合には薬剤のみの治療を優先します。
腫瘍の大きさ、部位によっては流産や異常分娩のリスクを高めてしまうことがあり、その場合には手術を勧められます。
腫瘍のある部位、大きさなどによっては、卵巣や子宮を摘出するケースもあります。
子宮筋腫治療薬の主な作用と副作用
■ブセレリン酢酸塩(スプレキュア)
・作用
注射と併用することが多く、自宅で治療が行える点鼻薬です。
過剰に分泌している女性ホルモンを抑える働きがあり、2~3か月の短期間で子宮筋腫の病巣を小さくする効果が認められており、子宮筋腫の治療に広く使用されている薬剤です。
・副作用
偽閉経状態になるため、月経が止まり、体のほてり感やイライラ感が増すことがあります。
使い始めてから2週間ほどは、生理のような出血が続くことがありますが、異常はありません。
■ダナゾール(ボンゾール)
・作用
子宮内膜症の治療にも使用されることがある薬剤で、男性ホルモンの分泌を優位にすることで、病巣を小さくする効果が認められています。
・副作用
ニキビや、肝機能異常、むくみ等が現れることがあります。
まれに多毛や声変りなどの男性化症状が起こることがありますが、治療を止めるともとに戻るものです。
まとめ
子宮筋腫は自覚症状がないことが多いため、病巣によっては手術が必要ないこともあります。
子宮を傷つけない新しいタイプの手術方法はまだ実施している医療機関が少なく、技術も確立させていません。
妊娠を望む場合には、できるだけ薬剤による治療をおすすめします。