近年、「妊娠したいなら葉酸を摂るべき!」「葉酸摂取のためにサプリメントを使おう!」という風潮が強まってきているように感じます。
10年ほど前までは葉酸という言葉をあまり聞いたことがないという方も多かったのではないでしょうか。
一般的に、妊娠するためや妊娠中・授乳中に積極的に摂るべきと言われている葉酸ですが、あまりに多く摂りすぎてしまうと、不妊の原因を作ってしまう可能性があります。
ここでは、1日1000㎍以上摂ることへの危険性についてお話します。
葉酸サプリメントの過剰摂取によるビタミンB12欠乏
葉酸は子宮内膜を厚くしたり、妊娠しやすい状態に整える働きがあり、かつ妊娠後も正常な妊娠を継続させたり、胎児の先天性異常を回避する効果が高いことで知られています。
日本では、厚生労働省の呼びかけにより、全国の保健所を通して、妊婦さんや産婦さんに向けてできるだけ葉酸を摂ることをすすめています。
しかし、その反面、葉酸は過剰摂取による危険性もあります。
その危険性とは、以下のものです。
- 喘息(粘膜が弱くなるため)
- 葉酸過敏症(葉酸へのアレルギー反応)
- ビタミンB12欠乏症による悪性貧血
特に、ビタミンB12欠乏症による悪性貧血については、妊娠したい方には気を付けていただきたい症状です。
不妊症にかかる血液検査では、必ずと言っていいほど貧血の検査を行います。
ビタミンB12が欠乏すると、検査結果は“貧血は見られず正常”または、やや低値を示すことがあります。
もし正常値だとしても、めまいや立ちくらみ、頭痛や手のしびれなどの自覚症状が起こることがあり、再検査でビタミンB12量を測定すると、基準値を下回っていたということがあります。
ビタミンB12は、血液の循環や血液内の酸素量を高めるために欠かせない栄養素で、これが欠けてしまうと、子宮内膜の状態や卵巣の機能に異常がもたらされることがあります。
葉酸の1日の摂取目安量は240㎍ですが、妊娠を望む方で、特に「できるだけ葉酸を多くとりたい」という方には、目安量の倍の480㎍を目安に摂っていただくとよいでしょう。
ビタミンB12欠乏(悪性貧血)の診断
一般的に、貧血かどうか、また不妊症にかかる血液検査で行われる検査方法が、血中のヘモグロビン濃度を測定するものです。
それにより、貧血ではないと診断されても、実は隠れた悪性貧血のことがあります。
<ヘモグロビン濃度の基準値>
女性:12~16g/dl
男性:14~18g/dl
悪性貧血かどうかというのは、ヘモグロビン濃度の測定ではわかりません。
そのため、平均赤血球容積(MCV)算出法という検査方法を用います。
この方法では、赤血球1個当たりの平均容積を測定します。
この平均容積が大きければ大きいほど、悪性貧血の可能性が高く、かつ症状が重度であることを示しています。
<平均赤血球容積(MCV)の基準値>
81~100fl
葉酸は必ずビタミンB12と一緒に摂る
葉酸だけを過剰摂取すると、思わぬ体の異常や不妊の原因になってしまうことがあります。
妊娠したい方向けのサプリメントの中でも、葉酸は特に人気で、「葉酸はたくさん摂るべき」という風潮がありますが、摂り過ぎによって健康を害してしまう恐れもある、危険性も持っています。
サプリメントで葉酸を摂ろうと考えている方は、必ずビタミンB12を一緒に摂るように心がけましょう。
ビタミンB12は、葉酸の造血作用を助ける効果があり、葉酸とビタミンB12は、一緒に摂ることで、それぞれが本来の力を発揮することができます。
「たくさんのサプリメントを飲むのは大変」という方には、葉酸とビタミンB12が一緒に含まれているタイプもおすすめです。