妊娠するためには、主に二つのホルモンの働きが大きくかかわっています。
一つは、卵胞ホルモンと呼ばれるエストロゲンです。
もう一つが、黄体ホルモンと呼ばれるプロゲステロンです。
この二つのホルモンが交互に分泌量を増減させることで、毎月の月経がスムーズに行われ、結果的に妊娠しやすい体を作っています。
黄体ホルモンとは
卵巣の中で卵胞(卵子を包んでいるクッションのようなもの)が十分に成熟すると、卵巣から黄体形成ホルモンが分泌されます。
これをLHサージといい、LHサージが起こってから16~24時間以内に排卵が起こります。
黄体ホルモンは、子宮内膜を厚くし、妊娠しやすい状態に整える働きがあります。
また、受精卵の着床後は妊娠を継続するホルモンとして妊娠中は分泌量が増加し続けます。
妊娠中は、厚くなった子宮内膜を維持したり、妊娠後に胎児に栄養などを供給できるよう体内に栄養や水分を蓄え胎盤を形成する働き、粘度のあるおりものを大量に排出させることによって膣内に細菌が侵入するのを防ぐ働きなどがあります。
実は、女性にとってはうれしくない作用が多いホルモンで、女性らしい体つきや美しさをつくる卵胞ホルモン(エストロゲン)とは反対に、吹き出物などの肌トラブルが出やすくなったり、便秘、胸の張りなどの不快症状が引き起こされることがあります。
また、精神的にも不安定になったり、イライラ感を引き起こす原因にもなっています。
このように黄体ホルモンは、妊娠前の女性にはデメリットしか感じられないものかもしれませんが、妊娠しやすい体をつくるために、また妊娠を継続させるために重要な役割をもっています。
黄体機能不全とは
黄体機能不全とは、こうした黄体ホルモンの働きに問題がある状態のことをいいます。
黄体機能不全なると、子宮内膜の形成が不十分で、着床しにくい、妊娠できたとしても流産しやすいなどの問題が起こり、結果的に妊娠しづらくなる場合があるため不妊症の原因の一つとなっています。
黄体機能不全は自覚症状がない場合がほとんどで、痛みや不快感などの症状がないため気づきにくいのです。
妊娠したいと思ったら、まずは基本的な不妊検査を行い、黄体機能不全などの隠れた不妊原因がないか確認してみましょう。
黄体機能不全の原因
・卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌低下
黄体機能不全の一番の原因として考えられるのが、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が低下していることです。
そもそも黄体とは、卵子を放出した後の卵胞が変化したもののことをいいます。
卵胞の状態を整え、卵子の成熟を促すのが卵胞刺激ホルモン(FSH)です。
卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が悪いと、卵胞の質が悪くなり、結果的に黄体の質も低下します。
そのため、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌低下による卵胞の発育不全が黄体機能不全に大きくかかわっているのです。
・黄体形成ホルモン(LH)の分泌低下
先に解説したLHサージの状態の時に分泌される黄体形成ホルモン(LH)の量が少ないと、LHサージは不完全な状態となってしまい、黄体機能不全を引き起こしてしまうことがあります。
また、黄体形成ホルモン(LH)の量が少ないためにLHサージが起こらず、排卵が起こらないこともあります。
毎月月経はあるのに、実は排卵が起こっていない無排卵月経の状態です。
・子宮内膜の感受性の悪さ
黄体ホルモンが問題なく分泌されているにもかかわらず、子宮内膜の感受性が悪いために子宮内膜を十分に厚く整える機能が働いていないことがあります。
子宮内膜が厚くないと、受精したとしてもうまく着床することができず、結果妊娠につながりにくくなってしまいます。
基礎体温を記録し、早期発見をめざす
一度黄体機能不全と診断された場合、ホルモン剤を使っての治療が行われます。
治療は短くても3か月以上かかるため、早く妊娠したいと望んでいる方は、ぜひ普段から基礎体温表を記録することをおすすめします。