男性ホルモンであるテストステロンは、女性にも微量ながら分泌があり、心身のあらゆる機能が正常に働くのに役立っています。
女性の場合のテストステロンの正常な分泌量は健康な男性の約1/10ほどと言われており、分泌量が多すぎても少なすぎても体の機能を正常に保つことはできません。
特に分泌が多い場合には妊娠するためのあらゆる働きに異常が現れやすくなり、結果不妊症の原因となってしまうことがあります。
女性の体にとって、テストステロンがどのように働いているのかと、検査方法やテストステロンの検査数値に問題がある場合などについて解説します。
テストステロンの働き
テストステロンは男性ホルモンであり、女性にとっては一見関係ないように思われがちです
が、実は女性の心身を健康に保つために重要なあらゆる働きをしてくれています。
脳下垂体から指令を受けた卵巣がテストステロンを分泌しています。
女性の体におけるテストステロンの働きには、主に筋肉や骨を丈夫にする作用があります。
成長期にテストステロンの分泌量が増えるものの、男性と比べると生涯を通して分泌されるテストステロンの量が圧倒的に少なく、男性より女性に骨粗しょう症や筋力低下が起こりやすいのはこのためです。
筋肉量を増やす効果があるということは、それだけ脂肪を減らす働きがあるということでもあります。
筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、脂肪燃焼度が高まり、ダイエットを助けてくれる効果もあります。
精神的な面でも、テストステロンは重要な働きをしています。
意欲を向上させたり、論理的な思考を助けるのはこのテストステロンが作用していると言われています。
そのほか、性欲を増進させる働きもあます。
女性ホルモンであるエストロゲンも性欲を増進させる働きがありますが、こちらは受容的な効果であるのに対して、テストステロンは能動的な効果のものであり、種類が異なります。
エストロゲンが増えすぎるのを抑制する働きがあります。
エストロゲンとテストステロンの二つのホルモンのバランスが保たれていることが、女性にとっては妊娠しやすい健康的な状態と言えるのです。
テストステロンの基準値
女性の場合のテストステロンの基準値は0.06~0.80の間です。男性の場合と比べると、およそ10分の1程度であるのが正常な数値です。
テストステロンの検査方法
他のホルモン検査と同様に、血液検査を行ってテストステロンの量を測定します。
テストステロンは1日の中で分泌量が変化するホルモンのため、検査を行うには比較的分泌量が安定している朝早い時間帯に採決を行うのが一般的です。
朝に検査を行うのが難しい場合には、数回に分けて同じ時間に検査を行い、数値にぶれがないことを確認します。
テストステロンの数値が高い場合
先に述べた通り、1日の中で分泌量が変化するホルモンであるため、多少基準値を超えているのはまったく問題ありません。
しかし、大幅に基準値を超える場合には体に何らかの異常が起きていることがあります。
テストステロンの数値が基準値を大きく超えていて分泌量が多い場合には、排卵障害が引き起こされている可能性が考えられます。
高テストステロン症と診断された場合、多嚢胞性卵巣症候群などが原因となり、卵子を生成する機能に問題があったり、排卵自体が行われていない無排卵の状態に陥っていることがあり、妊娠の可能性が低くなります。
排卵障害が原因の不妊症は、不妊症全体の25%ほどと言われており、普段健康に過ごしている女性でも何らかの影響でホルモンバランスが乱れてしまうことで排卵障害が引き起こされます。
排卵障害のほかに、まれに筋肉量が増えたり、乳房が小さくなるなどの男性化の症状が見られます。
妊娠を希望する場合には、排卵誘発剤を使用することがありますが、非常に効果が強く副作用の多い薬のため、テストステロンやそのほかのホルモンの分泌量や体の状態を見ながら医師とよく相談したうえで慎重に判断しなければなりません。