プロラクチンは女性の場合には母乳の生成・分泌を促すホルモンですが、男性の体にも日常的に大きな影響をもたらしています。
例えば、子どもが生まれたばかりで子育てが大変な時期には、女性・男性ともにプロラクチンの分泌量が増加します。
これは、次の子供が出来ないように体が抑制しているためと言われています。
女性でプロラクチン量が増加すると妊娠に必要な機能が低下してしまいますが、男性にも同様に性機能が低下するなどの変化が現れます。
不妊症の原因を作ってしまう男性不妊の場合、プロラクチンの分泌量が多くなってしまう男性の高プロラクチン血症が増えてきています。
プロラクチンの基準値や働きなどについて解説します。
プロラクチンの働き
男性の場合、プロラクチンはおもに前立腺や精嚢腺などの性機能を発達させるための働きをしています。
そのほかプロラクチンの働きとして代表的なものは、性欲を抑えることです。射精後にプロラクチンが大量に分泌されますが、これは精子の生成スピードに合わせて射精回数をコントロールするためです。
そのほか、男性にとってプロラクチンは、イライラ感の緩和や理性的な態度を保つために必要な働きをしています。
プロラクチンの分泌量が多い場合、高プロラクチン血症と呼ばれますが、女性の場合とは違う男性特有の症状が現れることがあります。
プロラクチンの基準値
男性の場合のプロラクチン正常値は3.6~12.8 ng/mlと言われています。
しかし、女性とおなじく男性の場合でも日中と夜間のプロラクチン分泌量が異なる場合があるため、この基準値の範囲に入っていない場合は再検査を行うことがあります。
プロラクチンの検査方法
血液検査によって数値を測定します。
病院によっては、先に精液検査を行い、その結果を見てから血液検査を行うこともあります。
男性の高プロラクチン血症
プロラクチンの分泌量が増えすぎると、男性の場合は性機能の低下がみられます。
プロラクチンは男性の性機能の保つ役割をしている前立腺や精嚢腺に働きかけるホルモンですが、過剰に分泌されることによって勃起不全や性欲減少などが引き起こされ、男性不妊の原因となってしまいます。
性機能の低下以外にも、乳汁漏出(母乳が出ること)やまれに食欲不振、頭痛などの症状が現れることがあります。
- 脳の下垂体に炎症または腫瘍がある
- 視床下部の疾患(視床下部腫瘍・非腫瘍性視床下部肉芽腫など)
- 先端巨大症(成長ホルモンが過剰に作られることによって、手足や内臓、顔の一部分が肥大する病気)
- 原発性甲状腺機能低下症
- 慢性腎不全
- 肝機能の疾患
- 薬剤による副反応
女性の高プロラクチン血症の原因と共通する部分もありますが、男性の場合に隠れた原因として多いのが成長ホルモンの過剰分泌による先端巨大症によるものです。
高プロラクチン血症の原因としはあまり知られていませんが、この病気の患者の割合は女性よりも男性の方が多く、頬骨やあごの骨が突き出ているのが特徴です。
そのほか、肝機能の疾患も女性より男性に多く見られます。
生活習慣が乱れるとまず機能に異常が現れやすいのが肝臓で、男性の方が脂肪肝などの肝機能障害の患者数がことが考えられます。
薬剤による副反応に関しては女性の場合とおおむね同じで、抗うつ剤や胃薬、血圧降下の薬などがプロラクチンを増加させてしまうことが分かっています。
これらの薬剤が、神経伝達物質の動きに大きく影響を与えることや、ホルモンの働きに関係のある自律神経系の調整などをするためです。
高プロラクチン血症の治療方法
下垂体や視床下部に異常があることで引き起こされる病気が原因の場合は、その原因となる部分に対して、経鼻手術(下垂体や視床下部は鼻の奥にあるため、鼻から器具を差し込み手術を行う)などで問題を取り除くことになります。
そのほか、ドーパミンなどでプロラクチンを抑制するための薬を服用するなどがあります。